製作工程
本染の袢纏ができるまで。
伊藤染工場の袢纏の染め工程は「手捺染(てなっせん)」、「引染(ひきぞめ)」、「硫化染(りゅうかぞめ)」の3種類に分かれます。
染物の種類によって染め方が変わりますが、どれも職人の手染めの方式にこだわり、妥協を許さず一枚一枚丁寧に仕上げます。
デザイン
原寸デザインの作成
お客様のご要望を聞き取りながら、寸法、デザイン、色を確認し、パソコンの専用ソフトで原寸デザインを起こします。
当店の染物のデザインは、主にパソコンを使用して作っていますが、お客様のご要望やデザインの種類・完成度によっては、当店自慢の職人によって手描きでデザインを起こしています。 手間暇はかかりますが、その分良質の染物をご提供できますので、ご注文の際にぜひお問い合わせいただければと思います。
染め工程
手捺染(反応染め)
型をおいた型枠に染料を流し、その上をスキージングというヘラで染み込ませる染め方を『手捺染』といいます。 この工程では、糊置きをしないで染色します。多色染めの場合は、1色ごとに型を作成し、1色ごとにスキージングします。乾燥後蒸し機に入れて固着させ、さらに洗濯し生地が出来上がります。 裏抜け具合は、生地の厚さにより異なります。柄がクリアに表現できるのが特徴で、袢纏や手拭などに使われます。
型の作成
版下図を描き、その後カッターでカットし、版下図の通りに、型紙を紗張りした型枠に貼り付けます。


染め
調合した染料を型枠に流します。型枠の上でスキージ(ヘラ)を滑らせ、均等に染めていきます。


乾燥
染めた反物は手早く1反ごとに作業室内で干して乾燥します。染めた反物同士が触れ合わないよう、細心の注意を払います。


蒸し、水洗い
蒸し箱に入れ、スチーミングで染料を固着させます。 蒸し終わった反物は、余分な染料を洗い流すために水洗機で洗い脱水した後、干して乾燥させます。


乾燥
水洗いが終わったら、日光による天日干しを行います。梅雨の時期など天候が不順な時期は、お急ぎものに限り室内で乾燥させることもございます。

引染め
引染めは、染料をつけた刷毛を引いて布を染めていく技法で、染めない部分を作るための防染方法に型を置いて行う「型糊置き」と、筒袋に糊を入れて手書きで防染糊を置く「筒引き」があります。色鮮やかで細かい模様が入る郷土芸能衣装などは引染めで製作します。
糊置(のりおき)
引染めの糊置きは「型糊置き」と「筒引き」の2種類があります。
筒引きは特に、大きな神社幟や紋幕の作成時に使われます。糊を置いた後は、糊の上におが屑をかけ、粘着性があって柔らかい状態の防染糊が他へ移るのを防ぎ、防染糊の表面を保護します。

<型糊置き>
生地を台に貼り付け、その上に型を乗せ、染めない部分に防染糊を置いていく技法

<筒引き>
下絵の描かれた生地を浮かせ、筒袋を手で絞りながら直接糊を引いていく技法
染め
調合した染料を含ませた刷毛で、色鮮やかにむらなく染めます。染め終わったら固着剤(色止め剤)を塗り、一定時間置いて乾燥させます。


水洗い
染めた後は真水で洗い、生地の両面にブラシをかけ糊を落とします。 その後自動水洗機で水洗いし、更に手洗いで仕上げ洗いをして余分な染料を充分に落とします。


乾燥
水洗いが終わったら、日光による天日干しを行います。梅雨の時期など天候が不順な時期は、お急ぎものに限り室内で乾燥させることもございます。


硫化染め
硫化染めは、藍染ほど色落ちがせず、使うほどに程よく色が抜け独特の風合いが増します。日本の職人の心意気とともに長く愛用される仕事着に使われてきました。伊藤染工場では、伝統の帆前掛けや消防袢纏を、この硫化染めで染めています。
糊置(のりおき)
生地にデザインの型を乗せ、白く抜きたい部分にもち米で作った糊を置きます。置いた後は糊を定着させるために表面におがくずをかけ、屋内で乾燥させます。


赤入れ、ねずみ入れ
消防袢纏などで赤や灰色の差し色の箇所がある場合は、染めの工程の前に予め刷毛で染料を染み込ませます。「下引き」「上引き」の順で2種類の溶液を使用します。その後、硫化染色の際に染まらないよう糊ふせを施し乾燥させます。


染め
アルカリ溶液に浸した後、硫化染料に還元剤を混ぜた60〜70℃の溶液に、伸子掛けをした反物を沈め染色します。その後ゆっくりと上げ、色ムラにならないよう素早く生地を広げて空気酸化をします。 その後、酸化剤を加えた溶液に通し、布の脆化を防ぐとともに発色を更に良くします。


水洗い
染めた後は真水で洗い、生地の両面にブラシをかけ糊を落とします。 その後さらに自動水洗機で水洗いをします。


※充分な水洗いをしておりますが、浸染の性質上、多少染料が布に残ります。ご利用前に一度お洗濯をしてお使いください。
乾燥
水洗いが終わったら、日光による天日干しを行います。梅雨の時期など天候が不順な時期は、お急ぎものに限り室内で乾燥させることもございます。


仕上げ工程
検品、縫製
乾燥させた反物は縫製室に集められます。きちんと染め上がっているか、傷や穴が無いかを入念にチェックした上で、袢纏の仕様に仕立て上げます。お客様の希望に添って、袖裏、背縫い、肩裏などをつけ、襟を縫製して完成です。袖裏、背縫い、肩裏については「袢纏・法被の仕様について」をご覧下さい。